一生懸命書いた文章が、なぜか読まれない。
時間をかけて考えた言葉なのに、反応が薄い。
SNSに投稿しても、いいねがほとんどつかない。
そんな経験はありませんか?
「内容は悪くないはず」
「ちゃんと説明しているのに」
「正しいことを書いているのに」
――それでも、伝わらない。
この“ズレ”の正体に、鋭く切り込んでくれるのが
**武政秀明さんが書かれた『22文字で、ふつうの「ちくわ」をトレンドにしてください』**です。
この本は、コピーライティングのテクニック本でありながら、
それ以上に**「人に伝えるとは何か」**を根本から問い直してくれる一冊です。
そして、読んでまず衝撃を受けたのは、次の一文でした。
私たちが伝えようとしていることの全部が相手に届くと考えること自体が誤解である
この言葉を読んだ瞬間、すべての“伝わらなさ”の原因が腑に落ちました。
「伝える」とは、“削ぎ落とすこと”から始まる
私たちは、伝えたいことがあるとき、つい足してしまいます。
- もっと詳しく説明しよう
- 誤解されないように補足しよう
- 丁寧に書こう
その結果、どうなるか。
「情報は増えるが、伝わる量は減る」
これは、多くの人が陥る落とし穴です。
本書が教えてくれるのは、真逆のアプローチです。
メッセージは「一点集中」に尽きる
つまり、削ることこそが、伝えることなのです。
「響く言葉」は才能ではなく、3つの力で作られる
本書では、「響く言葉」を生み出すための力として、次の3つが挙げられています。
- 見る力
- 分解する力
- 言い換える力
この3つは、どれも特別な才能ではありません。
**鍛えることができる“思考の型”**です。
1. 見る力――同じものを見ても、発見できる人とできない人の差
「ちくわ」という、ごく普通の食べ物。
これをトレンドにする。
普通に考えれば、難しい話です。
でも、本書は問いかけます。
「どの視点で見たら発見が生まれるか?」
たとえば、
- 「安い食品」ではなく「コスパ最強のタンパク源」として見る
- 「地味な食材」ではなく「万能すぎる食材」として見る
- 「お弁当の脇役」ではなく「主役にもなれるポテンシャル」として見る
視点を変えるだけで、価値は変わります。
これは、商品だけの話ではありません。
あなた自身のスキルも、経験も、発信も、
どの視点で切り取るかによって“価値”が変わるのです。
2. 分解する力――「なんとなく良い」を言語化できるか
良いと思う。
でも、なぜ良いのか説明できない。
この状態では、他人には伝わりません。
そこで必要なのが、「分解する力」です。
本書では、「なぜ?」を起点に、4W1Hで考えることが推奨されています。
- Why(なぜ良いのか)
- Who(誰にとって良いのか)
- When(いつ役立つのか)
- Where(どんな場面で使えるのか)
- How(どう役立つのか)
これを徹底すると、「ふわっとした価値」が「具体的な価値」に変わります。
3. 言い換える力――“自分ごと”にできるかどうかがすべて
どれだけ良いことを言っていても、
それが自分ごとにならなければ、人は動きません。
そこで重要になるのが、「言い換える力」です。
- 専門用語 → 日常語へ
- 抽象表現 → 具体表現へ
- 他人の話 → 自分の話へ
この変換ができる人ほど、言葉が届きます。
「共通語」を使えない人は、どれだけ書いても伝わらない
本書の中で、非常に重要だと感じたのが、**「共通語」**という考え方です。
これは、
相手と自分が同じように理解している言葉
のこと。
たとえば、
「エンゲージメントを高める施策」
と言われても、多くの人はピンときません。
でも、
「お客さんが“また来たい”と思う仕組み」
と言い換えれば、一気に理解できます。
つまり、
**伝わらない原因は“語彙の難しさ”ではなく“共通語の不在”**なのです。
「自分のための言葉だ」と思わせる技術
人は、「自分に関係ある」と思った瞬間に、初めてその言葉に耳を傾けます。
では、どうすればそう思ってもらえるのか。
本書では、次の2つが有効だとされています。
1. 比較・対比でメリットを見せる
- Before / After
- 他との違い
- やる場合 vs やらない場合
これを示すことで、「自分にとっての意味」が明確になります。
2. 相手の「知っていること」を並べる
人は、知らない話より、
知っている話の延長のほうが理解しやすい。
たとえば、
「毎日の通勤時間、スマホを見て終わっていませんか?」
この一文だけで、多くの人が「自分のことだ」と感じます。
なぜ「数字」はこんなにも強いのか
本書では、特に響く数字として次の4つが挙げられています。
- 年齢
- 時間
- 年収・時給
- 生活のお金
これは非常に納得感があります。
なぜなら、これらはすべて、
誰もが“自分の基準”を持っている数字だからです。
さらに、数字には2つの大きな効果があります。
1. 具体性を生む
「たくさん」より「3つ」
「長い時間」より「30分」
数字は、イメージを明確にします。
2. 安心感を生む
「だいたい」より「約80%」
「多くの人」より「10人中8人」
数字は、信頼を補強します。
「わかる」とは、言葉だけでは成立しない
本書の中で、個人的に最も深かった定義がこれです。
「わかる」=言葉+経験(体験・実感)
つまり、どれだけ説明しても、
体験と結びつかない限り、人は本当には理解しないのです。
抽象を具体に変える3つの技術
概念的な話を伝えるときには、次の3つが重要です。
1. 見える化
目に見えないものを、形にする。
2. 身近さ
日常の体験に引き寄せる。
3. 行動
何をすればいいかを明確にする。
言葉の本質は、「相手の中で完成すること」
本書の根底に流れている思想は、非常にシンプルです。
相手の立場に立ち、相手の言葉で考える
これに尽きます。
言葉は、書いた瞬間に完成するのではありません。
相手の中で意味を持ったときに、初めて完成するのです。
価値は「見つけるもの」ではなく「作るもの」
本書では、価値を見いだすための4つの視点が紹介されています。
- 視点をずらす
- 抽象から具体へ
- マイナスをプラスに
- 看板から価値へ
これは、すべての発信者にとって重要です。
価値は、最初からあるものではありません。
見せ方によって生まれるものです。
なぜ「物語」は人の心を動かすのか
どれだけ論理的に説明しても、人は動きません。
でも、物語には人を動かす力があります。
本書では、その理由として次の3つが挙げられています。
- 想像力を刺激する
- 共感を生む
- 記憶に残る
さらに、物語を作る視点として、
- 時間の流れ
- 人の存在
- 変化のドラマ
が重要だとされています。
伝わらない人ほど「足し算」をしている
最後に、非常に実践的だったのが、削るべきポイントです。
- 説明的な修飾語
- 文脈でわかる情報
- 説明不要な価値判断
これは、すぐにでも使えます。
なぜ「複数パターン」を考える人ほど成長するのか
本書では、複数の表現を考える重要性も語られています。
理由は明確です。
- 思考の幅が広がる
- 価値を深掘りできる
- 比較できる
- 迷いが減る
- 表現力が上がる
まとめ|伝わる言葉は、技術であり、思いやりである
この本を読んで、私ははっきりと理解しました。
言葉はセンスではない。
技術であり、思考であり、相手への想像力だと。
- 見る
- 分解する
- 言い換える
- 共通語を使う
- 数字で具体化する
- 物語で伝える
- 不要なものを削る
そして何より、
相手のために書く
この当たり前のことを、どれだけ徹底できるか。
それが、「伝わる人」と「伝わらない人」の違いなのだと思います。
最後に|あなたの言葉は、まだ伸びる
もし今、
- 書いても読まれない
- 発信しても反応がない
- 自信が持てない
そう感じているなら、大丈夫です。
それは才能の問題ではありません。
やり方の問題です。
そして、そのやり方は学べます。
この本は、そのための“地図”です。
言葉は変えられる。
伝え方は磨ける。
そして、伝わる世界は、必ず広がる。
あなたの言葉は、まだ伸びます。