賃金を低く抑えようとする努力からは、会社の繁栄はうまれない
以前のブログで取り上げました、かつて東芝の経営再建を成し遂げた土光敏夫氏の著作である『[新訂]経営の行動指針』(本郷孝信編、産業能率大学出版部)に書かれている言葉です。
連合や様々な産別労働組合が、来春闘での要求額を決定し公表している様子を見ていて思い出した言葉です。
労働組合もない社員が数人の会社であれば、社長が決めてしまうのが手っ取り早いし、社員を納得させることもできるかもしれません。
しかしある程度の規模になれば、給与制度というルールを決めて運用するほうが上手くいくのではないでしょうか。
賃金管理研究所の代表取締役所長である大槻幸雄氏は、社員10人を超えた社長の必読書として『社員が成長するシンプルな給与制度のつくり方』を書かれています。
よく経営の大事な要素として「ヒト・モノ・カネ・情報」と言われますが、その中でも特に重要なのは「ヒト」ではないでしょうか。
「ヒト」=「社員」が安心して働ける環境を整えることが、会社の成長には必要不可欠なのは間違いないでしょう。
そして「社員全体のやる気の総和を最大化する」ためには、社員の理解と納得を得られる賃金人事制度の構築と運用が必須だといいます。
30年余りの私の社会人経験で感じているのは、特に運用が難しいということです。
運用しているといろいろとやりたいこととの矛盾が出てきて、いつの間にか制度が骨抜きになってしまうことが多いのです。
特に声の大きい経営者がいると間違いなく、そもそもの制度の目指した姿からは遠く離れた運用になってしまいます。
その結果、
【不満】賃金や賞与支給額が期待水準に達しないことに対する不満
【不平】他の社員と比べて自分の賃金処遇が低いことに対する不平
【不信】自分を正当に評価しない会社や上司に対する不信
【不安】将来の賃金処遇が見通せないことに対する不安
をもつ社員が増えてしまうことになります。
そうならないような「給与制度」をつくる実践手順として、
STEP1:社員のやる気を引き出す賃金の考え方を知る
STEP2:社員が納得し安心して働ける給与制度を仕掛ける
STEP3:努力が正当に評価されれば実力社員はしっかり定着する
という3STEPにまとめられています。
中小企業基本法によると、小規模事業者の定義は常時使用する従業員が卸売業・サービス業・小売業は5人以下、それ以外の業種は20人以下となっています。
小規模であっても、常時使用する従業員が10人以上であれば、就業規則を定めて届け出が必要ですし、わかりやすい賃金制度の構築・運用が必要なのではないでしょうか。
これから起業しようとするみなさん、従業員の育成に悩んでいる経営者の方々にお勧めの一冊です。