シリーズ累計発行部数は590万部を超えるベストセラーであり、現在も小学館発行の『週刊ポスト』で連載が続いている『逆説の日本史』。
私も文庫本にはなりますが、第1巻『古代黎明編 封印された「倭」の謎』から2024年2月に発売された第26巻『明治激闘編 日露戦争と日比谷焼き討ち事件』まで手元にあります。
これだけのベストセラー本を書き続けている井沢元彦氏ですが、ご存じの方も多いと思いますが、そもそも歴史の専門家ではありません。
大学卒業後はTBSで報道記者をしていた井沢元彦氏が歴史ノンフィクションとして書かれた第一作である「言霊」信仰に気づかれたのは、映画『座頭市物語』をも放送できなくさせた言葉狩りだといいます。
この時の言葉狩りは、それまで普通に使われていた言葉を差別を助長するものだとして、徹底的に追放する運動だったといいます。
ここまでの言葉狩りは世界の中でも日本にしか見られない現象。そこには日本独自の思想、理論的には説明がつかないものを信じる日本独自の宗教である「言霊信仰」があることに気づかれたのです。
また、この時に世界と日本を比較することの重要性にも気づかれたのでしょう。
『真・日本の歴史』では、2つの比較の重要さを提唱されています。
一つは、「言霊信仰」の気づきにつながった世界と日本の比較です。
世界の常識と日本の常識はどう違うのか。違いがわかったら、なぜ違うのか、そこまで突き詰めて考える
ことを推奨されています。
もう一つは、時間軸の比較です。
現在の常識で歴史を理解しようとしても理解できないといいます。
その時代の人々を理解するためには、
その人の行動を時間軸で比べ、事件の前後で何が変化したのかを見ることが大切
だと主張されています。
世界と日本の地理的な横軸の比較と、過去から未来へと流れる時間による縦軸の比較、この2つの比較によって、「真」の日本の歴史がわかるというのが、井沢元彦氏の一貫した主張です。
この2つの軸で先ほど述べた「言霊信仰」や「怨霊信仰」という日本人特有の宗教を理解することなしに、本当の日本の歴史はわからないと主張されています。
そして、この2つの信仰は現在の日本をも支配しているのです。
例えば、冠婚葬祭の忌み言葉や重ね言葉です。
言葉にすると実際に起こってしまう、起こらないようにするためには言葉にしない、正に言霊信仰が現在の日本でも生きているのです。
もうすぐ、自民党総裁選や立憲民主党党代表選が選が行われるようです。
前回の自民党総裁選ではご存じの通り岸田文雄氏が総裁に選ばれたのですが、その総裁選に立候補した方々を要職につけられました。
理由はいろいろあるのでしょうが、結局、敗れた人が怨霊となって災いをもたらすのを避けるためではないでしょうか。
意識していないかもしれませんが、「怨霊信仰」も現在の日本人の行動原理になっているようです。
日本人の行動を理解したいと思っている人にお勧めの一冊です。