このごろ、採用面接の時に応募者の答えを聞いていると、「おや?質問の回答になっていない」と感じることが多くなってきました。
おそらく私が聞きたいことが上手く伝わらなかったのでしょう。
あなたも自分が伝えたいことが相手に伝わらなかった経験はありませんか?
お願いしたのにしてもらえなかったり、思っていたものと全く違うものが出来上がったりという経験があるのではないでしょうか。
そのような思いをした人にお勧めの一冊として、『言語化大全』を以前に取り上げました。
『言語化大全』では、自分の思いや考えを相手に伝えるための言語化を鍛える方法として、「語彙力」を伸ばすこと、「具体化力」を鍛えること、「伝達力」を磨くことの3STEPが提唱されています。
そして1日につき5つずつ、5日間の合計25の具体的なトレーニングをまとめられている『5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』も取り上げました。
そのような「言語化」や「伝え方」などの書籍とは異なる新しい視点、考え方、実際のコミュニケーション法を提唱することを目的として書かれているのが『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?』です。
2024年に新書大賞を受賞した『言語の本質』(中公新書)の著者の1人である今井むつみ氏が書かれています。
「何回説明しても伝わらない」理由、それは一人ひとりの「知識や思考の枠組み(スキーマ)」が違うから、と今井むつみ氏は主張されています。
例えば、「犬」という言葉から、どのような映像が浮かびますか?
抱きかかえている子犬をイメージする人もいるでしょう。
大きな犬に引っ張られながら散歩している姿を思い浮かべる人もいるのではないでしょうか。
私には、幼少の頃に犬に追いかけられた経験がトラウマになって、還暦を超えた今でも犬に近づけない友人がいます。
その友人にとって「犬」という言葉は禁句です。
同じ言葉であっても、一人ひとりがそれぞれの経験等によって築いた枠(フレーム)を通して解釈しますので、相手に伝わらない、コミュニケーションが上手くいかないことが起こるのは当然ということです。
今井むつみ氏は
「あなたと私のスキーマは違う」ということを前提にしないで物事がスムーズに進むほど、今の世の中は単純ではなくなってきて
です。
フレームが違うという前提で、その距離を近づけていかなければ相手には伝わらないということです。
著書の終盤ではコミュニケーションの達人についても書かれています。
まずは達人のマネをすることによって、間違いなく相手に伝わる可能性はグッと上がると思います。
名人のスキルに自分の経験を加えていくのです。
その時に忘れてはいけないのは、
わかり合えない中でも、少しでもお互いに通じる表現を見つける。そう願って日常の努力を積み重ねるほうが、「すぐにわかる」よりも実はずっと大事なこと
です。
この考えをもって、試行錯誤を繰り返すこと。
おそらくそれが、相手にわかってもらう唯一の方法だと思うのです。
明日と言わず、今日から試行錯誤を始めようと思います。
みなさんも、相手にわかってもらうための試行錯誤を始めませんか。