前回のブログで渋沢栄一氏の『論語と算盤』を取り上げました。
渋沢栄一氏は『論語と算盤』で「道徳と経済の調和」をテーマに取り上げられていました。
その『論語』に書かれている正しい生き方、人として大切な道徳や倫理を踏み外した事例をまとめられているのが神山敏雄氏が書かれた『会社「性悪説」』です。
手元にある本を見ると、「1997年10月30日 初版1刷発行」とあります。
1997年は私は社会人になって4年目。
1997年に起こった主な出来事には、「山一証券の自主廃業」、「野村証券の利益供与事件」、「動燃で爆発事故」、「ペルー日本大使公邸人質事件」、「香港の中国返還」があります。
ちなみに消費税が5%に上がったのも1997年。
日本でも人気のあった「ダイアナ元皇太子妃が交通事故死」されたのも1997年。
非常に話題の多かった年でもあります。
何故、この本を買ったのか、今となっては全く思い出せませんが、いろいろな不安を感じる事故・事件が多かったため、この本を手に取ったような気がします。
ところで、「性悪説」は「性善説」と対比される言葉です。
人間は基本的に自己中心的であり、自己利益を優先するという考え方に基づくのが「性悪説」です。
これに対して、人間は本質的に善良であり、他者の利益を考えて行動するという前提に基づくのが「性善説」です。
神山敏雄氏は書名の通り、『会社「性悪説」』を主張されていますが、その根拠はあるのでしょうか。
神山敏雄氏は、
会社そのものは理性的・合理的存在であるとしても、その権力は大なり小なり派閥と抗争によって実権を握り、会社を支配していくのが常であるので、会社の実績を上げるため、または自己もしくは派閥のためには不合理な権謀術策、ときには法令違反の手段を用いてまでも組織を運営する可能性がある。そこに会社「性悪説」の根拠がある。
そして、『会社「性悪説」』に基づくからこそ、
現代の企業社会に当てはめれば、会社はその利益追求のため、天性的に悪いことをするのだから、社員は心して悪いことをしないように努めなければならない。
と主張されているのです。
神山敏雄氏は会社レベルで「道徳と経済の調和」は難しいという前提で、社員一人ひとりが自己管理と組織貢献の両立を目指すことを提唱されています。
そのための具体的手法も提案されていますが、一人ひとりの置かれている環境は違いますから、参考にしながらも自分自身で考え、行動しなければなりません。
そうしなければ、もしかしたら会社犯罪の生け贄になるかもしれません。