AIによって仕事を奪われるのはホワイトカラー。
AIやロボットによって、例えば工場での生産現場が自動化されて、そこで働いているいわゆる非ホワイトカラーの仕事がなくなっていくというイメージが一般的かもしれませんが、そうではないといいます。
AIによって仕事がなくなるという警鐘をまず最初に鳴らしたのは、2013年に発表されたイギリスのオックスフォード大学のマイケル A. オズボーン氏とカール・ベネディクト・フレイ氏との共同研究だと言われています。
それ以前に、新井紀子氏が2010年に出版された『コンピュータが仕事を奪う』の中で指摘されていますが、残念ながらこの著書はあまり話題にはならなかったようです。
日本で注目を集めたのは、2015年に株式会社野村総合研究所が、「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に~601種の職業ごとに、コンピュータ技術による代替確率を試算~」という、研究結果でした。
これらの研究に対する問題点については、以前に取り上げた『人事の企み』で海老原嗣生氏が指摘されています。
著書の中で海老原嗣生氏は、どちらかというと非ホワイトカラーとAIやロボット、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)との関係性に焦点を合わせているため、ホワイトカラーに与える影響にはあまり触れられていません。
少子化でも大学生は増え、しかも就職に有利だと一般的に言われている有名大学の学生は減少しないので、ホワイトカラーに人手不足は発生しないと主張されていますが、そのホワイトカラーの仕事自体がどうなるかについては、この著書では重きを置かれていません。
冨山和彦氏は日本の生産年齢人口の現状と予測、AIなどによる破壊的イノベーションを踏まえて『ホワイトカラー消滅 私たちは働き方をどう変えるべきか』を書かれています。
著書の中で、ルールベースで動く、あるいはアルゴリズムベースで動く、人間の判断が必要のない仕事は確実に生成AIに置き換わっていく、残るのはある種の直感や価値判断によって意思決定をする「ボス仕事」しかホワイトカラーには残らないと主張されています。
そう考えると、給与計算や経理、法務、カスタマーセンター等々、消滅してしまう仕事が思いつくのではないでしょうか。
実際、そのような動きを実感されている方も多いのではないでしょうか。
そのような流れの中で、一部の人はホワイトカラーの「ボス仕事」を行うとして、それが出来ない大勢の人はどうすればいいのでしょうか。
冨山和彦氏は、「アドバンスト・エッセンシャルワーカー」を目指すことを提唱されています。
「エッセンシャルワーカー」はコロナ禍で話題になりましたが、「人々が最低限の生活、あるいは快適な生活を維持するために欠かせない職業」に従事する人々のことを言います。
そして、「さまざまなテクノロジーなどを駆使し、できるだけ少ない時間で、できるだけ多くの価値提供を行い、できるだけたくさんの対価がもらえる」エッセンシャルワーカーのことを「アドバンスト・エッセンシャルワーカー」と冨山和彦氏は定義されています。
「アドバンスト」するための提案もされていますので、「アドバンスト・エッセンシャルワーカー」を目指すのも一つの選択肢となるのではないでしょうか。
現在、あるいは未来の働き方に疑問を持ったり、不安を感じている人には、ぜひ読んでいただきたい一冊です。