「うちの商品は普通すぎる」
「競合と比べて強みがない」
「もっと価値を出せと言われても、何をすればいいかわからない」
こんな悩みを抱えている人は、決して少なくありません。
ですが、柿内尚文さんの著書『このオムライスに、付加価値をつけてください』は、その前提を根底から覆します。
本書が一貫して伝えているのは、
「付加価値は、特別な才能や発明から生まれるものではない」
という事実です。
むしろ付加価値とは、
見方を変えること
問いを立て直すこと
相手の立場で考えること
から生まれる、極めて再現性の高い技術なのです。
この記事では、本書のエッセンスをもとに、「付加価値とは何か」「なぜ多くの人が作れないのか」「明日から何を意識すればいいのか」を、具体的に解きほぐしていきます。
1. 付加価値とは「想定外のうれしさ」である
柿内さんは、価値を次の3つに整理します。
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既存価値:ないと成立しないもの(合格ライン)
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付加価値:なくても成立するが、あると喜びや感動が生まれるもの
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不要価値:なくても成立し、あってもうれしくないもの
ここで重要なのは、
付加価値は「なくてもいい」ものだという点です。
多くの人は、
「もっと性能を上げなければ」
「もっと安くしなければ」
と考えがちですが、それは既存価値の強化にすぎません。
付加価値とは、
相手の想定をほんの少し裏切ること
期待の斜め上を出すこと
なのです。
2. ないもの探しをやめた瞬間、仕事は楽になる
本書で何度も強調されるのが、この考え方です。
ないものは、ない。
だから「あるもの」をどう活かすかを考える。
多くの会議や企画が行き詰まる理由は、「足りないもの探し」をしてしまうからです。
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予算がない
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人手が足りない
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実績がない
こうした制約条件は、嘆いても消えません。
しかし、「あるもの」に目を向けると、景色が変わります。
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今すでに持っている顧客
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当たり前すぎて見逃している強み
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失敗した経験
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面倒くさいと思っている工程
これらはすべて、付加価値の原材料です。
3. 仕事とは「付加価値をつくること」である
柿内さんは、仕事をこう再定義します。
仕事とは、付加価値をつくること。
この一文は非常に強力です。
なぜなら、仕事の見え方が一気に変わるからです。
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指示されたことをこなす
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言われた通りに作業する
-
ミスなく処理する
これらはすべて「既存価値」を維持する行為です。
そこに、
「どうしたら相手はもっと喜ぶか?」
「この工程に意味を足せないか?」
という視点を加えた瞬間、仕事は“作業”から“価値創造”に変わります。
4. 付加価値は「自分ベース」ではなく「相手ベース」
本書で最も重要なポイントのひとつが、ここです。
付加価値は、いつも自分ベースではなく相手ベース。
「頑張った」
「工夫した」
「時間をかけた」
これらは、相手にとっては価値ではありません。
価値になるのは、
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使いやすくなった
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選びやすくなった
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不安が減った
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気持ちが軽くなった
といった、相手の変化です。
付加価値とは「自己満足の上積み」ではなく、
相手の感情が動いた結果なのです。
5. 「ちょい付加価値」が積み重なると強くなる
付加価値というと、大きなアイデアを想像しがちですが、本書は真逆のことを言います。
「ちょい付加価値」を数多く提供せよ。
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一言の補足説明
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選びやすい並び替え
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失敗談の共有
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先回りした注意書き
これらは単体では小さく見えます。
しかし、積み重なると「この人(この会社)は違う」という印象になります。
派手な一発より、
地味な親切の連打
これが、長く選ばれる理由になります。
6. 視点をずらすと、価値は一気に増える
柿内さんは、付加価値を生む代表的な技法として「ずらす法」を紹介しています。
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お客さんをずらす
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目的をずらす
たとえば、同じオムライスでも、
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子ども向け
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忙しいビジネスパーソン向け
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ダイエット中の人向け
と対象をずらすだけで、価値の訴求点はまったく変わります。
商品を変えなくても、
意味を再定義するだけで付加価値は生まれる
これが、本書の核心です。
7. 失敗談は「人との距離を縮める付加価値」
意外に見落とされがちなのが、失敗の価値です。
失敗談には、人との距離を縮める効果がある。
成功談は尊敬を生みますが、共感は生みにくい。
一方、失敗談は、
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親近感
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安心感
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信頼
を生み出します。
とくに個人発信・ブログ・SNSにおいて、
失敗談は強力なメンタル付加価値になります。
8. 付加価値には「ファクト」と「メンタル」がある
本書では、付加価値を2種類に分けています。
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ファクト付加価値:性能・機能・実績・数値
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メンタル付加価値:共感・安心・物語・姿勢
多くの人がファクトばかりを積み上げようとしますが、
差がつくのはメンタル付加価値です。
「この人から買いたい」
「この会社を応援したい」
こうした感情は、スペック表からは生まれません。
9. 付加価値思考が身につくと、仕事は奪われなくなる
AIや自動化が進む時代において、
「言われたことを正確にやる人」は、真っ先に代替されます。
一方で、
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相手の立場で考え
-
問いを立て
-
価値を再定義できる人
は、どんな時代でも必要とされます。
付加価値とは、
仕事を守る武器であり、広げる武器でもある
のです。
まとめ|付加価値は「特別な人」だけのものではない
『このオムライスに、付加価値をつけてください』が教えてくれるのは、
付加価値は才能でもセンスでもなく、思考の技術だということです。
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ないものを嘆かない
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あるものを見直す
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相手の立場で考える
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小さなうれしさを積み重ねる
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視点をずらす
この積み重ねが、
「選ばれる理由」
「仕事の楽しさ」
「自分の市場価値」
をつくっていきます。
あなたの仕事にも、必ず付加価値の種は眠っています。
あとは、それに気づく視点を持つかどうか──それだけなのです。