ご存じのとおり2024年7月3日に日本のお札が変わります。
新たに1万円札の肖像として選ばれたのが渋沢栄一氏です。
渋沢栄一記念財団という公益財団法人が出来るほど明治以降の日本経済の発展に大きく貢献された偉人と言ってもいいと思います。
財務省のHPには、紙幣の肖像の選定は
(1) 偽造防止の観点から、なるべく精密な写真を入手できること
(2) 肖像彫刻の観点からみて、品格のある紙幣にふさわしい肖像であること (3) 肖像の人物が国民各層に広く知られており、その業績が広く認められていること
といった観点を踏まえて、明治以降の人物から採用していると書かれています。
渋沢栄一氏は、東京商工会議所によると481社の会社の設立に関わったと言われていますから、「長い時を経た現在でも私たちが課題としている新たな産業の育成」に貢献したことが認められたのでしょう。
「日本資本主義の父」「実業界の父」と呼ばれ、ノーベル平和賞の候補にもなったというほどの人物ですから、お札の肖像に選ばれても不思議ではありません。
偉大な実業家である渋沢栄一の著書が『論語と算盤』です。
『論語』は多くの人が耳にしたことがあるかと思いますが、古代中国の思想家である孔子の教え(言行)を弟子の人たちがまとめたものです。
『論語』は人としての正しい生き方を教える本で、正直で思いやりのあり行動を重視しています。
渋沢栄一氏は『論語』から学んだ道徳や倫理を大切にしていたのです。
「算盤」は今ではあまり使うことが少なくなったように思いますが、昔は商売をするうえで欠かせないものであり、渋沢栄一氏が活躍した時代ではお金の計算や管理に欠かせないものでした。
渋沢栄一氏は「算盤」を商売=経済の象徴としたのです。
渋沢栄一氏は、事業(ビジネス)を本当の意味で成功させるためには正しい心を持ったうえでお金を稼ぐことが重要だと考え人々に説いているのです。
つまり、この著書のテーマは「道徳と経済の調和」だと私は理解しています。
ビジネスで成功するには倫理観が不可欠であり、正直で誠実な行動が長期的な繁栄をもたらすと主張します。
また、利益追求だけでなく社会貢献も重要視し、事業を通じて社会全体を豊かにすることを目指しており、現代の企業倫理や持続可能な経営の先駆けと言えるのではないでしょうか。だからこそ、新たな1万円札の肖像に選ばれたのではないでしょうか。
書かれている具体的な経営哲学やエピソードの中には、リーダーシップや人材育成のヒントも豊富に含まれています。
現代のビジネスの現場で直面する課題に対して、道徳と実践の両面からアプローチする方法を学びたいという皆さんにお勧めの一冊です。