労働基準監督署の取り扱った令和4年の賃金不払い総額は120億円超

2023(令和5)年7月27日に、令和4年(令和4年1月から令和4年12月まで)に賃金不払いが疑われる事業場に対して、労働基準監督署が実施した監督指導の数字を取りまとめた結果を、厚生労働省が公表しています。

そもそも、賃金とは?

労働基準法の賃金の定義を知っていますか?

労働基準法第11条に

賃金とは、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの

と、定義されています。

「労働の対償」として「使用者が労働者に支払う」ものですので、いわゆるお客様から頂くチップは賃金にはなりません。

また、労働基準法第24条には、賃金は、①「通貨」で②「直接労働者」に③「全額」を④「毎月一回以上」、⑤「一定の期日」を定めて支払わなければならないと定められています。

これを一般的には「賃金支払い5原則」と言います。

それぞれの原則に定められた例外の対象となる場合を除き、賃金支払い5原則が守られなかった場合、賃金不払いとなり得ます。

令和4年の賃金不払いは120億円超

公表された資料によると、令和4年の1年間で賃金不払いとして労働基準監督署が監督指導した金額の総額は 121億2,316万円となっています。

この中には、倒産や事業主の行方不明により賃金が支払われなかったものも含まれているとのことです。コロナ禍が落ち着いたものの、人不足等により倒産企業が増えているような報道も散見されますので、残念ながら令和5年はもっと賃金不払いの金額は増えてしまうかもしれません。

なお、令和4年中に、労働基準監督署の指導により使用者が賃金を支払い、解決されたのは79億4,597万円、約80億円で不払い賃金の65.5%になるようです。3分の1は令和4年中には解決しなかったということになります。

時間外手当を支払わなかった場合は送検されることも

監督指導での是正事例や送検事例も合わせて公表されています。

是正事例としては、労働時間を適正把握するように是正した例や労働時間記録と労働実態の乖離を是正した例が挙げられています。

「労働時間を適正把握すること」と「労働時間記録と労働実態を一致させること」が重要になります。

また、時間外割増賃金の支払い額に上限を設け、上限を超える時間外割増賃金を支払わなかった例や監督官に虚偽の陳述を行い時間外割増賃金を支払わなかった例が、送検された例として挙げられています。

どちらも支払うべき時間外割増賃金を故意に支払わなかったということです。

支払うべき賃金を故意に払わないというのは、かなり悪質であり、絶対にしてはいけません。

これだけインターンネット環境が行き渡った時代ですから、すぐに悪評は広がり、炎上するかもしれません。

それだけで経営は行き詰まるリスクが大きくなりますから、事業を継続し、経営者も労働者も幸せになれるように、法律を守って適切な賃金を支払いましょう!

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする