日本の企業は本当に終身雇用制なのでしょうか?
新卒一括採用では本当に競争力が維持できないのでしょうか?
年功序列賃金では本当にグローバル企業に勝てないのでしょうか?
これらは、就活ルール廃止議論のきっかけとなった経団連の中西宏明会長の発言に感じた私の疑問です。
中西宏明会長は、「終身雇用制」、「新卒一括採用」、「年功序列賃金」に代表される日本型雇用では、これからの時代、企業は生き残れないと考えられているのです。
みなさんは、この中西宏明会長の意見にどのように思いますか?
そもそも前提となっている、日本型雇用はあるのでしょうか?
日本の終身雇用制は幻想に過ぎない!
本当に新卒一括採用で終身雇用制であるならば、大卒であれば22歳で入社し、23歳で勤続1年、24歳で勤続2年と、勤続年数=年齢-22歳という式が成り立ちます。
もちろん、大学に入るときに浪人を経験した人、在学中に留年した人等もおられますので、多少は前後することはあるでしょう。
その可能性を考慮したとしても、年齢50歳であれば、50歳-22歳=勤続28年-2~3年、54歳であれば、54歳-22歳=勤続32年-2~3年ではないでしょうか?
つまり、新卒一括採用で終身雇用制であれば、50歳代前半で勤続25~30年となるはずです。
実際、年齢と勤続年数にこのような関係があるのでしょうか?
厚生労働省が毎年、「賃金構造基本統計調査」を発表していますので、確認してみましょう。
2017(平成29)年の「賃金構造基本統計調査」によると、年齢が50~54歳の大学・大学院卒の平均勤続年数は 21.9年になっています。ちなみに高校卒は平均勤続年数 20.3年と、大学・大学院卒よりも短くなっています。
学歴ではなく、企業規模でみてみると、大企業でも、年齢が50~54歳の平均勤続年数は 25.0年にしかなっていません。
高専・短大卒や高校卒も含まれていますので、新卒一括採用で終身雇用制であるならば、もっと平均勤続年数が長いはずです。
大企業とはいえ、終身雇用制は実際は幻想である、と言えるのです。
終身雇用を多くの人が求めています!
独立行政法人労働政策研究・研修機構が「第7回勤労生活に関する調査」結果を2016(平成28)年9月23日に公表しています。
その調査結果によると、終身雇用を支持する割合は 87.9%ということです。約9割の人が終身雇用を支持したというのです。
日本の企業は終身雇用制と認識し、支持しているということなのでしょうが、厚生労働省の調査から、実際は終身雇用ではないのです。
経営者も労働者も日本は終身雇用だと思っている。しかし残念ながら、実際は終身雇用ではない。
このように思い込みと現実には大きな差があるのです。
現実をしっかりと見つめましょう。
そうしなければ、何をすればいいのか、わかりません。
現実を正しく理解すること、そこから始めなければなりません。