2016(平成30)年2月26日付日経新聞の私見卓見というコラム欄に、国際医療福祉大学の稲垣誠一教授が「増える中高年女性の貧困に光を」という記事を掲載されていました。
非常にショッキングな内容でした。
未婚・離別女性の約4割が生活保護の対象!?
稲垣教授のシミュレーションによると、2030年には未婚・離別女性の約4割が生活保護の対象になるというのです。
なぜ、そのようなシミュレーション結果になってしまうのでしょうか?
要因として、以下のことがあげられています。
- 親と同居しながら非正規で働く人が多い
- 家事手伝いという名目の無職も多い
- 賃金水準が低く、貯蓄も少ない
- 年金制度は夫がいる人に手厚い(未婚・離別女性は薄遇)
- 年金自体も減っていく方向にある
それでは、どうすれば未婚・離別女性の貧困化を防げるのでしょうか。
年金制度の抜本的改革が必要!
稲垣教授は、貧困化を防ぐためには、
- 抜本的な年金改革
- 生活保護が急増する前提での福祉の制度設計
が必要であると提言されています。
いづれも国の制度の話になります。
したがって、自分自身あるいは周りの人たち、働いている会社等のレベルで、直接的に変えることはできません。
貧困を防ぐために、何もできないのでしょうか?
女性の賃金水準をあげることが解決策の一つ
2018(平成30)年2月28日に、厚生労働省が「平成29年賃金構造基本統計調査」の結果を公表しました。
貧困の要因の一つとして、女性の賃金水準があげられています。
現在、女性の賃金水準はどのようになっているのか、見てみましょう。
下表「性、年齢階級別賃金および男女間賃金格差(一般労働者)」をご覧ください。
年齢階級 | 男性賃金(千円) | 女性賃金(千円) | 男女間賃金格差 (男=100) |
---|---|---|---|
年齢計 | 335.5 | 246.1 | 73.4 |
20~24歳 | 210.5 | 202.5 | 96.2 |
25~29歳 | 248.1 | 225.9 | 91.1 |
30~34歳 | 289.0 | 241.6 | 83.6 |
35~39歳 | 324.1 | 254.0 | 78.4 |
40~44歳 | 358.7 | 262.4 | 73.2 |
45~49歳 | 394.7 | 268.2 | 68.0 |
50~54歳 | 424.0 | 270.0 | 63.7 |
55~59歳 | 412.2 | 262.9 | 63.8 |
60~64歳 | 294.1 | 224.3 | 76.3 |
65~69歳 | 261.0 | 220.1 | 84.3 |
女性の平均賃金水準(一般労働者)は男性の7割強
男性の平均 335.5千円(年齢43.3歳、勤続13.5年)、女性の平均 246.1千円(年齢41.1歳、勤続9.4年)となっています。
前年と比べると男性が0.1%増加、女性は0.6%増加で過去最高とのことです。
男女間の賃金格差(男=100)は、比較可能な昭和51年調査以降で過去最少の73.4となっています。
20年前の平成10年は、男女間の賃金格差が63.9ですので、20年間で10ポイントほど格差が小さくなったことになるようです。
それでも女性の給料は男性の7割強ということです。
これは一般労働者の賃金格差ですので、女性のほうが多いといわれている短時間労働者も含めて考えると、もっと格差は大きいのではないでしょうか。
ピークでは、女性の賃金水準(一般労働者)は男性の6割強
表を見ていただくとわかるとおり、男性は50歳代まで賃金が右肩上がりで伸びていきます。
一方、女性は年齢があがっても賃金はあまり伸びていません。
男女ともに賃金水準のピークは50~54歳で、男性は 424.0千円、女性が 270.0千円になっています。
男女間の賃金格差は63.7と最も格差が大きくなっています。
この状態が続くようであれば、稲垣教授の指摘されているとおり、中高年女性の貧困化が大きな問題になるかもしれません。
貧困対策として、稲垣教授は国の制度の見直しを提言されています。
私は、国の制度を変えるのには時間がかかるだろうし、今の国会を見ているとなかなか前に進みそうもないな、と思います。
しかしながら、女性の給与を上げることは、民間企業でできます。
就活が始まったばかりですが、初任給を引き上げるという記事を散見します。
初任給を引き上げる前に、女性の賃金を引き上げるべきではないでしょうか。
女性が働きやすい環境をつくるべきではないでしょうか。
そうすることが、みんなが幸せになれる道だと信じています。