2018(平成30)年8月3日の日本経済新聞朝刊に、「給与 デジタル払い可能?」という記事が掲載されました。
多くの人は、銀行等の金融機関へ給与を振り込んでもらっているのではないでしょうか。
それを「デジタルマネー」で受け取れるようになるのでは、という記事です。
本当に可能なのでしょうか?
労働基準法では、給与は通貨と決められています!
給与の支払いについては、労働基準法第24条第1項に「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と、定められています。
原則として、通貨でしか受取れないのです。
ただし、法令や労働協約で定められている場合は、通貨以外で受け取ることもできます。
そのため、通勤定期を現物で受け取っている人もおられるでしょう。
賞与の一部を商品券で私も受け取りました!
私も、一度だけ、賞与の一部を商品券で受け取ったことがあります。
1990年代の後半に、自社製品が買える商品券で、賞与の一部を多くの企業が支給したことがあります。
なぜなら、企業から見ると現金での支給が減り、商品券で自社製品を買ってもらうことにより在庫も減るという、一石二鳥の効果があるからです。
私が勤務していた企業も賞与の一部を商品券で支給することになった時、あらかじめ労働基準監督署に相談し、労働組合にお願いして労働協約を改正したことを、今でも覚えています。
商品券の枚数を数えて、袋詰めしていくのもなかなか大変でした。
その頃は、そうしなければ生き残れないほど、多くの企業が本当に苦しんでいました。
給与口座を持てない外国人労働者への支払いがきっかけ!
ところで、給料を「デジタルマネー」で支払うことの議論の始まりは、2018(平成30)年の3月、東京都が特区の会議へ提案したことです。
発案のきっかけは、給与口座を開けないといった外国人労働者の相談とのことです。
外国人労働者が銀行口座を開くためには、日本に住所があり、期間が1年以上の在留カードが必要といった条件があるのです。
そのため、銀行口座を通さずに、給与を受け取れる「デジタルマネー」が注目されることになったのです。
この提案は、政府の目指している方向とも合致しています。
一つは、新たに外国人労働者の受け入れを50万人増やすという政府の方針。
もう一つは、2025年までに現金を使わないキャッシュレス決済の比率を4割にすること。
これらの政府の目標を達成するための有効な手段と成り得るのです。
「デジタルマネー」の課題は?
政府の方針から考えて、すぐにでも「デジタルマネー」で給与を受け取れそうですが、課題もあります。
特に大きいのは、安全性と破たん時の補償の問題でしょう。
実際、2018(平成30)年1月には、コインチェックから「NEM(ネム)」が不正流通してしまったという事件がありました。
そのような事件に対する補償がありませんし、事件や事故が再び起こる可能性もあります。
それらの理由で、厚生労働省が、今のところ反対しているようです。
とはいえ、政府の方針もありますので、遅かれ早かれ認められるでしょう。
認められたとき、あなたはどうしますか?
一人ひとりが考えていかなければなりません。決して人ごとではないのです。
やはり、一人ひとりが考えることが大切であり、幸せにつながる道なのです。