遺伝学というと、ナチスの「遺伝決定論」、優生思想によってホロコースト(ユダヤ人絶滅)を引き起こした歴史的事実と結び付けられるため、長い間、タブー視されてきた学問だと言われてきたそうです。その反動から、環境によってどのようにでも変われるという「環境決定論」が広く支持されてきました。
しかしながら、現在、時代は大きく変わり、
人間の遺伝と環境の相性(交互)作用によってつくられる
という行動遺伝学によって「知のパラダイム転換」が起きていると、著者の一人である橘玲氏は主張されています。
橘玲氏については、以前のブログで『人生は攻略できる』を取り上げました。その著書の中では、稼げる力(=人的資本)を増すためには、自分のキャラにあったこと、つまり好きなこと・得意なことに注力することが人生の成功法則であると提唱されています。
また著者の一人である安藤寿康氏は、行動遺伝学の見地から成功法則として、今回取り上げている『運は遺伝する』の中で、
環境に無理矢理自分を合せようとするのではなく、特性に合った環境を探してそれに応じた知識を学習する。あるいは自分の遺伝的な素質に合うような環境を自分から創り出す
ことを提唱されています。
環境に合わせるのではなく、自分の特性に合った環境を探して移る、あるいは環境を作り出すことを勧められているのです。
この考えは稲垣栄洋氏が書かれた『競争「しない」戦略』で主張されているCSR戦略、つまりナンバーワンになれるオンリーワンの場所を探す戦略と同じと言えるのではないでしょうか。
雑草の生態研究から見つけられた生き残り戦略と最新の行動遺伝学の研究が導き出した成功法則が同じというのは不思議な感じがします。人間だけではなく、生命に共通した戦略だからだと思うと納得できませんか?私はそう思っています。
それでは、どうすればいいのでしょうか。
私は、その一つの答えは、以前のブログで取り上げた中野信子氏がおっしゃてる「脳が喜ぶ刺激を与える」ことだと思うのです。「自分を活かせること」=「報酬系が刺激されて脳が喜ぶこと」というのが、私の仮説。今は残念ながら根拠を見つけられていませんが、そのように思えてくるのです。