みなさんは、ドラッカーと聞いたら、何を思い出しますか?
ピーター・フェルディナンド・ドラッカーは、「マネジメントの父」とも「マネジメントを発明した男」ともいわれます。
もしかしたら、2009(平成21)年に岩崎夏海氏が書かれた『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(ダイヤモンド社)で初めて知ったという人も多いかもしれません。
ドラッカーは2005(平成17)年11月11日に亡くなっています。
そのドラッカーが、もし2020年の日本人に預言するとしたら、どのようなメッセージを残されるでしょうか。
それが、田中弥生氏が書かれた『ドラッカー 2020年の日本人への「預言」』(集英社)のテーマです。
「預言」と「予言」の違い
この本の題名では、一般的によく使われる「予言」ではなく、「預言」という表現が使われています。
この違いを知っていますか?
「予言」は「予測発言」がつづまった言葉と言われ、「未来のものごとを予測して伝える」という意味です。
それに対して「預言」は、宗教的な言葉で、「神からの言葉を預かって、それを伝える」という意味になります。
ですから、著者の田中弥生氏がドラッカーからの言葉を預かって、それをみなさんに伝えるために書かれた本、ということになります。
ドラッカーの原点は、第二次世界大戦前のドイツ
ドラッカーは青年時代にナチスを批判しドイツからイギリス、そしてアメリカへと移りました。
そのときの経験が、ドラッカーの思想の原点になっています。
著者の田中弥生氏は、ドラッカーが経験した第二次世界大戦前のドイツと今の日本では、
- 政策の内容ではなく、政権交代を目的に投票する有権者
- 選択肢がないと嘆く有権者
- 政局による内部分裂と低い投票率
- 勇ましい言葉のリーダーへの依存心
- 見てみぬふりする無関心の罪
といった共通点が多いと指摘されています。
ものすごく耳の痛い指摘ではないでしょうか。
しかもこの本は、2012年に出版されています。衆議院解散の後、選挙で自民党が圧勝し、安倍内閣が誕生した年です。
その当時よりも、今の日本のほうが、もっと第二次世界大戦前のドイツに似てきているかもしれません。
そのような日本のために、田中弥生氏がドラッカーの預言をまとめられたのです。
ドラッカーの預言とは?
田中弥生氏は公私にわたり、ドラッカーと交遊があり、ドラッカーであれば、今の日本にこのように言われるであろうと予測されて書かれています。
それが、
一人ひとりが位置と役割をもって生きる自由社会は、誰かが与えてくれるものではない。一人ひとりが自らの意志の力で築き、守らねばならないものなのだ。気づくのが少し遅かったかもしれないけれど、日本には、そのポテンシャルが必ずある
という預言です。
今のみなさんは、社会の中に自分自身の立つ位置、そして役割を持っているでしょうか。
それは、与えられるものではなく、自分自身で築き、守らなければならないものです。
ドラッカーの期待に応えられるよう、ぜひ、みんなで協力しながら、社会の中での各人の位置と役割を築こうではありませんか。
それが幸福になるための道なのです。