トヨタの固定残業制で残業時間は減る?

2018(平成30)年3月6日付の日本経済新聞朝刊にトヨタ自動車が導入した制度が再び紹介されていました。

トヨタ自動車はどのような制度を導入したのでしょうか?

係長級に固定残業制を導入!

日本経済新聞に記載された記事によると、トヨタ自動車が導入した制度は、

  • 対象:係長級約7,800人のうちの希望者
  • 固定残業手当額:残業時間45時間分として17万円を固定で支給
  • 残業手当:残業時間45時間を超える分は別途、支給

という内容でした。

この制度は、残業時間が45時間でも0時間でも17万円が支給されますから、残業時間が短ければ短いほど、社員にとってはメリットがあるとのことです。

同じ金額であれば、社員が残業時間を減らそうという意識をもって働くであろう、という考えがあるようです。

残業時間に応じて手当を支給すると、何か問題があるのでしょうか。

仕事が遅い人のほうが給料が多くなる?

同じ仕事を1日8時間で仕上げた人と1日10時間かかった人を比べてみましょう。

時間給を仮に計算しやすいように1,000円、残業時間については労働基準法の最低基準(2割5分)で割増し、1,250円とします。

1日8時間で仕上げた人は、残業はしていませんので、1日の給料は、8時間×1,000円=8,000円となります。

1日10時間かかった人は、8時間を超えた2時間分は残業となりますので、1日の給料は、8時間×1,000円+2時間×1,250円=10,500円となります。

ということは、仕事が遅い人のほうが同じ仕事量(アウトプット)であれば、給料が多くなってしまうのです。

残業手当を固定にすると、このような現象は起こらず、仕事が速い人も遅い人も同じ給料になります。

そのため、確かに同じ給料であれば、早く帰ろうというインセンティブが働くこともあるでしょう。

では、固定残業制にするだけで残業時間は減るのでしょうか。

固定残業制にすれば残業時間は減る?

固定残業制にするだけでは、残業時間は減らないのではないでしょうか。

まず、45時間を超えると残業手当が増えることには違いありませんから、ひと月の残業時間が45時間に近くなると、もう少し残業しようというインセンティブが働くかもしれません。

手当の水準によってはあり得るのではないでしょうか。

また、上司や同僚、部下、後輩が残業していると、無理矢理に仕事を作ってでも残業しないでしょうか。残業するほうが、評価が高くなると考えないでしょうか。

見方を変えて、上司から見たらどうでしょうか。できれば45時間まで仕事をしてもらいたいと思わないでしょうか。人情として、残業している人の評価を甘くする傾向はないでしょうか。

このように考えてくると、固定残業制を導入したからと言って、すぐに残業時間が減るとは思えません。

この制度を有効に使える企業になれるかどうか、が重要なのです。

そのためには、制度をまねるのではなく、制度を活かすための施策こそ、学ばなければならないのです。

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