アメリカのハリウッドに端を発した「#MeToo」ムーブメントから、「セクシャルハラスメント」という言葉をよく耳にします。
この「セクシャルハラスメント(以下、セクハラと略します)」という言葉は、1989(平成元)年の「ユーキャン新語・流行語大賞」の金賞を受賞しています。
この年に、「セクハラ」という言葉が一般に知られるようになったのです。
民事裁判によって、「セクハラ」という言葉が広まる!
1989(平成元)年8月に裁判が始まりました。
訴えたのは、福岡の小さな出版社で働いていた女性。裁判の前年に上司である編集長からの性的な嫌がらせ(セクハラ)によって解雇されていたのです。
編集長は女性について「取引先と不倫をしている」「中州で飲み歩いている」等の噂を社内外にふりまいていたといいます。
たまりかねた女性が社長と専務に相談すると、専務は「君が有能であることはわかっているが、男を立てることもしなければ」といい、「明日から来なくて良い」と女性に退職を強いたといいます。
女性は退職した後も、納得がいかず、労働基準監督署に不当解雇を訴えたり、編集長を相手どり名誉棄損による精神的損害を理由に簡易裁判所に調停を申し立てるものの、実らなかったのです。
そのようなときに、新聞記事で報道された「女性のための法律事務所」を頼り、裁判を起こしたのです。
裁判の結果、1992(平成4)年、編集長のほか、企業にも「適切な職場環境づくりが十分ではなかった」と不法行為責任を認め、連帯して 165万円を支払うように命じられたのです。
この裁判によって、「セクハラ」は世間に知れ渡ることになったのです。
1997(平成9)年に男女雇用機会均等法が改正される!
判決から5年後、1997(平成9)年に早くも男女雇用機会均等法が改正されました。
改正点はいくつかありますが、その中の一つとして、事業主(企業)にセクハラ防止措置を義務化したのです。
厚生労働省の指針では、セクハラは二つのタイプにまとめられました。
一つは、職務上の地位を利用して性的な関係を強要し、それを拒否した人に対し減給、降格などの不利益を負わせるという「対価型」のセクハラ。
もう一つは、性的な関係は要求しないものの、職場内での性的な言動により、働く人たちを不快にさせ、職場環境を損なう「環境型」のセクハラ。
この法改正にあわせて、セクハラを知ってもらい、セクハラを防止するための冊子をつくって社員全員に配布したことをよく覚えています。
まだ、セクハラはなくなったわけではありません!
男女雇用機会均等法の改正から20年あまり経ちます。
しかしながら、2016(平成28)年度の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)にセクハラで相談された件数は 7,526件、是正指導は 3,860件と、まだまだこの問題が解決されたわけではありません。
セクハラは重大な人権問題であると認識し、解決に向けて取り組んでいかなければなりません。
みんなが幸せになるために。