2018(平成30)年4月14日の日本経済新聞朝刊に「人手不足なのに… 派遣時給、下落の怪」という記事が掲載されました。
人手不足と言われ、3日前の2018(平成30)年4月11日の日本経済新聞朝刊には「転職で賃金増 広がる」という記事が掲載されていました。求人のために広告会社や人材紹介会社の方に話をお聞きしても、社員、契約社員、アルバイトを問わず、募集給与は上がっている、と言われます。
その一方で派遣社員の時給が下がっているというのです。なぜ、そのような現象が起こるのでしょうか?
実は、派遣社員の時給もあがっています!
新聞の記事をもう少し詳細に見てみましょう。記事のもとは人材サービスのエン・ジャパンがまとめた2018(平成30)年2月の三大都市圏(関東、東海、関西)の派遣社員募集時の職種別の時給にあります。
職種 | 2017年2月 平均賃金 | 2018年2月 平均賃金 | 前年比 | 募集案件数 ※前年同月比 |
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IT系 | 2,066円 | 2,131円 | 65円増 | 1.3倍 |
技術系 | 1,715円 | 1,768円 | 53円増 | 1.3倍 |
クリエイティブ系 | 1,691円 | 1,757円 | 66円増 | 1.4倍 |
オフィスワーク系 | 1,517円 | 1,531円 | 14円増 | 1.5倍 |
営業・販売・サービス系 | 1,423円 | 1,430円 | 7円増 | 1.2倍 |
医療・介護系 | 1,235円 | 1,256円 | 21円増 | 3.8倍 |
全体 | 1,536円 | 1,527円 | 9円減 | 1.5倍 |
上記の表のとおり、全職種で時間給が上がっているのに、全体の平均では下がるという現象はなぜ起こったのでしょうか。
ポイントは職種別の募集案件数にあります!
以前のブログで雇用の数という「量」は増えたけれども、収入という「質」の面では決して満足のいくものではない、と書きました。
同じことが派遣社員の平均時間給にも表れています。
仮に派遣社員の時間給と募集人数を以下のとおりとすると、
- IT系:時間給 2,000円で50名募集
- 介護系:時間給 1,000円で50名募集
全体の平均時間給は、(2,000円×50名+1,000円×50名)÷(50名+50名)=1,500円になります。
時間給がそれぞれ100円上がり、募集人数もぞれぞれ下記のとおり増加したと仮定すると、
- IT系:時間給 2,100円で65名(1.3倍)募集
- 介護系:時間給 1,100円で190名(3.8倍)募集
全体の平均時間給は、(2,100円×65名+1,100円×190名)÷(65名+190名)≒1,355円になります。
職種別に時間給を比較すると、それぞれ100円ずつあがっているものの、募集人数は時間給の低い介護系がIT系に比べて大幅に増えたために、全体の平均時間給が下がってしまったのです。
「量」と「質」の問題は派遣社員にも起きてしまっているのです。
個人として「質」を上げるためには、待遇の良い職種に就くことが考えられます。とはいえ、誰もがつけるわけではありません。
介護職の給与を上げるためにはどうすればよいのでしょうか?
介護業界は公定価格の介護保険からの収入に依存しているため、経営努力だけで給与の引き上げは難しいといわれています。
であるならば、給与の引上げを経営者に求めている政府が、音頭をとって介護職の給与の引上げを考えるべきではないでしょうか。
国債を発行してでも財源を確保し、公定価格を引上げ、介護職の賃金引上げを促すべきであると私は考えます。
これ以上、国債を発行することに反対意見もあるかもしれません。しかし以前のブログでも書きましたが、日本の財政状況はそんなに心配しなくてもいいのではないでしょうか。
日本円は安全資産と言われているのですから。